たよりNo54 平成29年1月15日発行
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 新年明けましておめでとうございます。新春が皆様にとって良いスタートとなりますようご祈念申し上げます。 弊社はこれまで数多くの建築構造物を手掛けてまいりましたが、これまで最も苦労した建築についてご紹介させて頂きます。 その建物は、2013年に完成したヤマト運輸羽田クロノゲートであります。総事業費1387億円を投じてヤマト運輸が整備する物流ターミナルです。その中で弊社が担当させて頂いたのは体育館とセレモニー施設の機能を兼ねる地上2階建て延べ床面積が1868.8m2のフォーラム棟です。 直径約60m、最高高さ13.46mの逆円錐型の「お椀」のような外観で壁と水平線との角度が約51°の傾斜を持つ超難題の建築物でした。超難題の構造体に弊社建築部長も及び腰で失敗したら...との思いが頭をよぎったのでしょう、断腸の思いでお断りしませんかとの意見でした。 私も図面を見れば見るほど難しさが見えてきて、そうだなぁ失敗したら取り返しのつかない事になってしまうなぁと思うようになり眠れない日々が続きました。しかし、ある方の人生には必ず岐路に立つ事があるよ、その時に楽な道を選ばず困難な道を選ぶときっと良いことがあるよとの教えを思い出し、せっかく弊社を選んで頂いたのにお断りするのは失礼ではないかと思い、建築部長始め製作担当者に私の思いの丈を伝えました。 担当者は本意ではなかったと思いますが結果的に製作を請け負う事になりました。しかし、いざ製作が始まってみると苦労の連続で、初日は朝から翌日のお昼まで掛かってしまう始末でこの先どうなるのかと正直頭を抱えました。なにせ部材がデカ過ぎてこれまでの物件とはスケールがまるで違います。 1枚約90tの巨大なプレキャストコンクリート(PCa)板を24枚並べ花びらのように円形に構築する建物です。PCa板とは言っても純粋な壁部材ではなく梁も柱も一体となった曲面台形の超複雑部材であります。それに加え柱部材を研ぎ出して化粧骨材が見えるようにする意匠ため、骨材が分離しないように工夫する必要もありました。 すべてが未知の世界へのチャレンジでした。1枚90tの部材は運ぶ事が不可能なため3分割のマッチキャスト製法で製作し、現場にてプレストレスで緊張一体化する方法で計画されました。施工方法も地上で組んだ鉄骨屋根を12枚のPCa板が自重で外側に倒れる力を利用して持ち上げるという前例のないアップリフト構法が採用されました。すべてが苦労の連続でしたが皆さんの頑張りと工夫で無事に完成する事が出来ました。 ご指導下さいました設計事務所ならび施工会社の皆様に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。思い出深い大変貴重な仕事となりました。“花びら”開いて苦労が報われる...東栄コンクリート工業 ㈱新 田 裕 之賛助会員たよりTalking about you...28たより

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