東北コンクリート製品協会会報No.7 2017年9月15日発行
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― 57 ―新シリーズ⑤ 皆さんは宮城県の加美町ってどこにあるかご存知ですか? おそらく、「その町はどこにあるの」と言った感じで知らない人がほとんどでしょう。 宮城県加美郡加美町は、平成の大合併によって、平成15年4月1日、旧中新田町、小野田町、宮崎町の3町が一緒になった、人口わずか二万四千人程度の小さな町です。今回はその中の旧中新田町に古くから伝わる火伏せの虎舞を紹介したいと思います。 まずはその歴史を紐解いていきます。 往古より早春の強風による大火が多かったこの地方では「雲は龍に従い、風は虎に従う」の故事にならい六百七十年前に起源を発する「火伏せの虎舞」が旧中新田町の多川稲荷社の祭礼行事として永く行われてきました。防火意識の高揚と地域振興のための民俗行事として先人より受け継がれ、昭和四十九年に「宮城県重要無形文化財」の指定を受け、また平成十八年には国の「記念すべき無形民俗文化財」に指定された郷土の誇るべき精神性の高い文化遺産です。 毎年4月29日(以前は天皇誕生日、現在は昭和の日)の休日の早朝から夕方まで行われる「初午まつり」は、虎たちが山車とともにお囃子に合わせて町中の各家々を回り、軒先や、玄関から中に入って火災が起こらないことを祈願して舞っていきます。数多くの出店やいろんなイベントも合わせて催され、この中新田地区に三万人を超える人達が観に来てくれる一年で最もにぎわいを見せる一日になります。 さて、このまつりの主役である虎たちですが、踊り子たちはすべて中学生達です。(基本的には男子ですが近年少子化のため女子もOK?) 祭りの一ヶ月ぐらい前に希望者を募り、厳しい審査?の上で踊り子たちを決定します。2週間前から各ブロックの稽古場で、中学校の部活動が終わってからの夜の七時から九時までの2時間、初午まつりの当日まで毎夜猛稽古が行われます。子どもたちの吸収力というものは素晴らしいもので、この短時間で見事な虎に変身を遂げていきます。当日は朝から晩まで町中を勇猛に闊歩し、その後町中の何軒かの屋根の上に登って勇壮な舞を披露して観客の喝采を浴び、まつりはクライマックスを迎えます。そして夕方近くになると子どもたちはもうヘトヘトになっていますが、最後の舞の舞台になる中新田図書館に各部落に散らばっていた虎たちが集結し、屋根の上に登り最後の舞を踊ってフィナーレとなります。  皆さんも、是非機会をみつけてこの勇壮な虎の舞を観に宮城県加美町においでください。おらが町の火伏せの虎舞「初午まつり」中川ヒューム管工業㈱  尾 形   功平成29年願い共存共栄

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