東北コンクリート製品協会会報No.7 2017年9月15日発行
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― 2 ―平成29年願い協調融和八ッ場ダムは多くの問題を含む公共事業の典型です。最初の建設計画は1949年(昭和24年)の「利根川改訂改修計画」に始まり、1952年に東京及び利根川流域を守るために利根川に10箇所のダムを建設する利根川上流ダム群計画に組込まれました。1967年に現在の地点にダム建設が決定されました。この間、水需要増大に対応して計画規模が拡大されました。だが、水没地域である長野原町において頑強なダム建設反対運動が起きました。1986年建設に関する基本計画で2000年の事業工期として策定されました。2008年に、工期が2015年に再延長されました。2014年8月7日、本体工事が落札して、本体工事着工の運びになりました。4.事業の遅れ事業の進捗が大きく遅れた原因の一つが政変による本体工事の中止です。そのときの世情<公共工事の削減を唱えるマニフェストへの人気>もあってのことだと思われます。ときの政権を批判するつもりはありませんが、プロパガンダ的な「コンクリートから人へ」というお題目を容認できず、本誌で反論?というか「コンクリートは人と共に」なる寄稿をしました。ご記憶の会員もおられると思います。この論考が功を奏したわけではありませんが、暫くしてこのお題目は取り下げられました。自民党政権になって事業が再開された訳ですが、それ以前に民主党政権の終わり頃にはダム本体着工もやむなしという機運が出ていました。中止であろうと継続であろうと、事業の歴史、背景等々を踏まえて、しっかり検討をした“政策”でなければなりません。税金の無駄使いをなくすことは大事ですが、中止した後の施策が不十分なら、いずれの方針であろうとお題目に終わってしまいます。5.ダム事業の問題点さて立ち返って八ッ場ダムですが、概要は表1に示されるとおりの大きいダムですが、一般に事業についての問題点を整理すると次の様なことが考えられます。八ッ場ダムも例外ではありません。水利権や供給土地の買収・補償、移転・代替地問題観光や産業への影響住民の同意、反対運動利水ダムの場合、水の需要量……過大な要求・見積治水ダムの場合     ……ダムの必然性、河川改修による       治水の可能性道路整備・交通の問題、他事業との兼ね合い 設計・施工の技術的な問題表1 八ッ場ダムの諸元河   川利根川水系吾妻川利用目的洪水調節・不特定利水・上水道・発電ダム型式重力式コンクリートダム堤   高131m堤 頂 長336m堤 体 積1,600,000㎥有効貯水量90,600,000㎥

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