東北コンクリート製品協会会報No.7 2017年9月15日発行
5/64

― 1 ―平成29年願い相互信頼1.はじめに今般は公共事業について、述べてみることにします。公共事業については以前から何度か論じています。徳島県の第十堰については尻切れトンボで終わっていて、宿題を果たさないままです。また、農水省の中海干拓事業(島根県)に関して、事業の中断したことについても述べました。公共事業は政治的問題が絡むので、話題にするにはなかなか難しい問題があります。この連載では政治、思想、宗教についてはなるべく触れないようにしてきました。ただ、公共事業の問題は政治だけではなく、私の専門の技術の問題に深く関わっていますので、その観点からいくつか触れてきました。特に、私が専門として携わってきたものの一つにダムがあります。ダムの事業についてはいろいろの問題があるので難しいところですが、やはりこの際、触れたいと思います。2.ダムとの関わり筆者は今までダム事業の主体者<施主、施工>として直接携わったことはありません。一研究者として、学会のダム研究委員会や公的団体のダム関係の検討委員会でダムに関わってきました。検討課題は、すでにダム建設を行うという前提での話です。そしていかに優れた技術を駆使して、より良いダムを作るかという観点で協力してきました。したがってその前段であるダム事業の良し悪しの判断は直接関わっていません。ただ、ダムの設計・施工について検討する場合、このダムは人々の生活に非常に役立つものであるということを大前提で進めています。特別連続寄稿公 共 工 事 に 思 う岩手大学名誉教授 藤 居 宏 一3.八ッ場ダム現在、一番問題になっているのは八(や)ッ(ん)場(ば)(群馬県)ダムです。八ッ場ダムについては、いままでいろいろと世情を騒がせてきました。それらを少し振り返りつつ、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。八ッ場ダムは最初の計画から67年を経て、ようやく一昨年着工されました。当初の計画からこれほど長くかかったものは多くはありません。余り長くなると事業は頓挫しがちだからです。図2 標準断面図及び下流側正面図図1 八ッ場ダムの位置

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る