東北コンクリート製品協会会報 No.4 2016年3月15日発行
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― 8 ―1.はじめに東日本大震災から早や5年の歳月が流れた。復旧・復興がまだまだという見方が多い。現に新聞によると岩手、宮城、福島の42市町村長の45%が、東日本大震災の復旧・復興が完了する時期は、3年前の立てた予想より遅れると答えている。本誌で前に、世界中の人に私の誕生日を知ってもらった?と述べたこがある。生命、家屋を失った方からみれば不謹慎かもしれないが、地震の遭った当日は安いチリワインで、夫婦でささやかに乾杯でもと思っていた。しかし、それどころではなくなり、電気・電話もダメになり、就寝前にカセット焜炉でわずかな暖をとって凌いだ。お陰で一つ歳を取り損ねた感がした。2.ラグビー、釜石2019年に日本で行なわれるラグビーのワールドカップの競技場の一つに岩手県の釜石市が選ばれた。岩手県はラグビーが盛んで、とりわけ釜石は鉄と並んでラグビーの町といわれる。1978年~1984年、新日鉄釜石ラグビー部は全国社会人大会及び日本選手権にて当時最多の7連覇を達成した。その後は、溶鉱炉の火も消え、いわゆる「鉄冷え」とともに2001年、企業チームとしてのラグビー部は終わりを告げた。また、製鉄業の衰退とともに、最盛時9万を数えた人口も今や3万5千である。自然減で震災による減はわずかである。同年、地域密着型のクラブチーム「釜石シーウェイブス」として生まれ変わり、東日本社会人リーグに属し、トップリーグへの昇格を果たせぬまま特別連続寄稿大人はあてにならない岩手大学名誉教授 藤 居 宏 一今日に到っている。前述のラグビー競技場は釜石市鵜住居地区に「復興スタジアム」(図1)として建設されることになり、すでに盛土工事が始まっている。東日本大震災まで、大槌湾に面したこの土地には釜石東中学校と鵜住居小学校があったのだが、津波で全壊・浸水の被害に遭い取り壊された。 3.釜石の奇跡昨年9月19日、民間ユネスコ機関主催で、「防災・減災」がテーマの教育に関するセミナーがあり、ユネスコ活動に関わっている筆者も参加・学習した。その中の話題で防災教育があり、釜石東中学校と鵜住居小学校の事例報告がなされた。筆者も仄聞していたが、両校の防災教育に関与した人の話だけに教えられるところが少なくなかった。以下、この釜石東中学校とすぐ近くにあった鵜住居小学校との震災時におけることを述べる。釜石市内の犠牲者の半数は鵜住居地区など大槌湾に面した地域だった。こうした状況のなか、両校は図1 復興スタジアム完成予想図平成28年願い協調融和

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