さくら物語19号
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新庄市の東部、休場から萩野・仁田山方面への道路が拓かれたことを知り、1998年4月22日に 通ったところ、休場東から北に向かって間もなく道路から東へ約100m位の所にオクチョウジザクラ らしき大きな株を発見しました。高さは4mにも満たないが、見事な枝張りに目を見張りました。 長い萼筒や樹形などからオクチョウジザクラと判定しました。このときの花の色はかなり濃い淡紅色 (写真1)でしたが、その後の観察により、年により花の色には濃淡に差異があることが分かりました。 オクチョウジザクラは東北地方から滋賀県にかけての日本海側、低山地、山地に普通の小高木。多雪地に適した匍匐性の樹形で、根元から多くの樹幹を出します。花は他のサクラに比し萼筒が8~10ミリと長く、花びらが平開に近いところから丁字桜の名がつきました。母種チョウジザクラは岩手県以南から九州にかけての太平洋側の低山地にあり、花の色はほとんどが が白で淡紅色が少なく、少し小さい花です。大森山のオクチョウジザクラは20数本の株立ちで、ソ メイヨシノより早く咲き、花期が長めです。多雪の年は長期間、周辺部の下枝が積雪下になるため、 中心部より開花が遅れます。一般には4月下旬から5月上旬が見頃です。2006年5月9日の計測では、 枝張りの径が南北10.8m、東西10.5m、周囲36.7mもありました。日本最 大級のものと思われます。植物研究グループの仲間にも見てもらいましたが、 県内最大とのことでした。同年5月、NHK「山形の自然」でも紹介され、2008年 3月26日、新庄市天然記念物に指定されました。現場は道路からの緩斜面、ススキ原の上部にあります。 道路傍に小さな案内板がありますが、普通、桜というと立派な立木を考える人が多いと思うのですが、 この木は小高木なので見落とす人もあるといいます。 (文責 大類貞夫) 山形県内には、日本を代表する桜の巨木や古木が数多くあります。また、春になると河川敷で人々の憩いの場になる桜並木や、山間で静かに咲く孤高の桜、桜は私たちに様々な姿を見せてくれます。フォーラムでは、県内の桜の紹介や、地域や行政の皆さんの維持管理を支援しています。 米沢市が管理する桜 オクチョウジザクラ(新庄市) |美しい山形・最上川フォーラム|08 米沢市は山形県の最南端に位置し、気候は米沢盆地特有の、夏は高温多湿で冬は特別豪雪地帯に指定されている厳しい自然環境です。その中で咲く桜は、市民にとって冬を耐えたご褒美のように感じられ、米沢に待望の春が訪れたことを告げるシンボルとして愛されています。 本市の桜の有名なスポットは、松が岬公園(上杉神社正面)と最上川上流河川緑地堤防両岸(松川)が挙げられ、そのどちらも 米沢市管理となっています。 松が岬公園は米沢城跡のお濠沿いに約200本のソメイヨシノが咲き乱れ、水面に映える情景が とても美しく、開花時期には夜間のライトアップも行われることから、昼夜問わず訪れる人を 魅了しています。 また、最上川上流河川緑地堤防両岸には約160本のソメイヨシノが咲き、ゴールデンウィークに 開催される米沢市の一大イベントである上杉まつりのハイライト、川中島合戦が行われる会場を 囲むように植栽されています。開花時期が重なれば戦国絵巻と同時に、桜を楽しむこともできます。そして、残雪として西吾妻山の中腹に浮かび上がる「白馬の騎士」と最上川の清流とのコントラストが鮮やかで美しく、これ以上ない最高のお花見ポイントとなります。 どちらも米沢の春を彩る美しい桜のスポットですが、いずれも樹齢60年~80年の老木が多く、近年は枯枝や雪による枝折れと損傷が多く見受けられるようになりました。維持管理においては、樹木巡視の強化や枯枝の撤去を行い、その中で倒木等の危険性が高いと判断したものについては、残念ながら伐採も実施しております。 昨年、松が岬公園の桜については、美しい山形・最上川フォーラムの「最上川・夢の桜街道推進事業 桜の維持管理相談」を活用し、樹木医の山田氏より桜の保存と育成にかかわる周辺樹木の調 査・ご指導をいただきました。診断の結果、生育基盤である土壌が全体的に硬くなり、樹木が上手く生育していないとのこ とでした。樹勢回復のため施肥を行うよう指導を受け、早速、降雪前に作業を行いました。さらに、桜の更新については各 団体より苗木を寄付していただき、伐採を行った箇所へ植栽するなど、地道に活動しております。 桜の樹齢を考えれば、戦後まもなく復興のシンボルとして植栽されたものも多いことから、今 後も積極的かつ計画的な樹木管理、土壌の保全などを行い、後世に美しい桜を残せるよう管理に 努めて参ります。 (米沢市建設部都市整備課公園緑地担当 主任 樋口 孝) 松が岬公園 最上川堤防桜と白馬の騎士(天元台) 松が岬公園での調査 写真1 発見時のオクチョウジザクラ オクチョウジザクラから月山を望む 平成12年5月 やすんば

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