さくら物語19号
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|美しい山形・最上川フォーラム|07 地域や所属を越えたキャッチボールを 須藤 大きな組織の方とお話する機会では、「参入が難しいな」と壁を感じる 時がある。アイディアを持ち寄ったら互いに良いことが起きるのは想像がつくのに、 どうアプローチしたら良いか悩むことがある。例えば「10年ごとに施設の椅 子を取り換える」という動きがある時、外国産のパイプ椅子を都度購入・廃棄 するのではなく、デザインを通して、「地元の杉材を購入して造ろう、壊れたら 地元で直そう」という風に、長期で捉えれば購入・廃棄同様のランニングコス トに収まり、予算に納めて木質化でき、地域が潤い続け、市民が愛着を持つ 構造になっていくイメージを描くことはできる。なんとかできたらな、といつも思う。 柴田 様々な会議に出た時に、地域住民や公的に納得できる使い方に視点を置いて話し合いを進めていかないといけない。フォーラムでは、みんなからの意見を県や国に伝えられるよう、全市町村と県、河川国道事務所の方にもメンバーになっていただいている。今日のお二人のような、こうすればもっと良くなるのではないかという思いをお持ちの人たちに意見をお伺いできる、このような機会は大変貴重。マッチングすることが可能なので、フォーラムをうまく活かしてほしい。 横尾 そのような意味では齊藤さんは? 齊藤 林業をやりたい若い人はいると思うのだが、県、国の発注単価が大きすぎる。例えば5,000万の仕事をもらっても、3人でやっていて1,000万の売り上げもないところだと、1か月毎に支払う資金繰りで行き詰まってしまうので受けられない。発注単価を見直してほしい。今のままだと大きなところは残るが新たな参入がしづらいので、起業せず下請けで働くだけになってしまう。 柴田 困っている部分を改善できるよう、一番必要な現場の声を、県の会議などで言った方がいい。小さな会社が1社だけでなく、組んで入札できるような仕組みに変えてもらえるよう、提案してはどうか。その際に、小さな会社ならではの工夫を考える、変えた方がいい理由をきちんと説明することが大事。 須藤 継続を見通したデザインを提案することは容易ではないが、とても重要だと思う。 柴田 特に古くからある産業は同じことを継続している場合が多いので、変える点もたくさんあると思う。歴史のある所はなかなか若い人の意見が通りにくいので、区域を越えてネットワークを作り、連携して提案してほしい。 横尾 山形の良さはたくさんあると思うが、次世代にどのようにつなげて行ったらいいと考えるか。 須藤 地域にとって、デザインはもっともっと課題解決に貢献で きる可能性があると思っている。「この地域にしかないもの」に更に フォーカスしてもらえるような提案をしていきたい。そういう小さ な成果や前例を増やしていければ、山形はもっともっと面白くなると 考えている。5年前、ヤマモリプロジェクトの初回体験ツアーの広 告チラシには「千歳山」の全景を大きく載せた。千歳山は日常の風 景ではあるかもしれないが、一番きれいに撮影出来るポイントを何日も 探り、撮影した。地元の人からとても反響があった。先に見える成果を 信じつつ、自身が地元にある物の見方を広げる突破口でありたい。 柴田 様々な人が意見を出しあい交流を深めて行くことが、継続的な活動につながっていく。 須藤 若い世代も先輩方もフラットに意見を出し、互いに勉強したり、その先で事業を一緒にできるような場はとても理想的であると思う。 横尾 森林ノミクスをまず根底で支えるのが齊藤さんのような方。現場の力を今後どう展開させていく? 齊藤 今やっていることをきちんと広げて行くこと。山形県は月山のような信仰の源で、山に仕事で出るようになって自然、野生動物の宝庫であると改めて感じる。ミネラル豊富な水が川を流れ、海へと循環する中で、かかわる人間の一人として、森を守る人を育てていかないといけない。仕事自体は厳しいがやりがいはとてもあり、携われる年齢も幅広い。それを若い人に伝えて行かなければ。 柴田 木材の供給サイドの一番源が齊藤さんで、需要サイドにいるのが須藤さん、お互いに意見を聞き、情報交換して、川上と川下をつなぐキャッチボールをしていただけるとありがたい。人々が交流し、事業を通じてつながり、柔軟に対応していくのがフォーラム。100年先まで継続し、より良い山形につなげて行くために、ここからもどんどんつながってほしい。 2017.3.17 icho caféにて FORUMTALK

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