さくら物語19号
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|美しい山形・最上川フォーラム|06 齊藤 今対策が進んでいない部分では、例えば松枯れのところに植林ではなく、防潮堤を作ってしまえとなったら、防災の面ではいいかもしれないが、本当にそこに住む人の幸せになるのか、50年先はどうなのかというところまで考えないといけない。うちで働いてくれているような隠れた人材を、もっと活用していかなければならない。そういう人たちと仕事をできているのは楽しく、いろんなことを教えてもらっている。 柴田 林業を元気にするためにもデザインが必要。間伐した木の運び方から活用まで含めて、白紙で見てどういう風にやって行ったらいいか考えないといけない。そういう意味では山形は遅れている気がする。 須藤 遊び心と面白い発想が活きるはず。 柴田 例えば山を訪れる人(サイクリング、ドライブ、近隣住民)が、中継で寄れるような場所にカフェや軽食を食べられる拠点を作ったらいいと思う。 須藤 実家の旅館(赤湯温泉「いきかえりの宿瀧波」、リニューアル休業中)では、宿からバスで烏帽子山や近隣の山に行き、サポートしながらマウンテンバイクで山を下る体験をする、季節の星空を見る、というアクティビティを定期的に開催したいと企画している。地元の人しか行かないようなところに、世界に誇れる本当に美しい場所があることを知ってほしい。 柴田 新しい物を作るのはお金がかかるが、今あるものを活かすと素晴らしい観光資源になる。都会では生産性をあげないといけないから短時間でやらないとだめだが、地域ならではの長時間かかって作られるような、例えば麹菌のような発酵産業を特産にすればいい。 齊藤 まさに今、それをうちの地元でやっている。産直に野菜を出荷しているが、規格外の野菜を漬物に加工して売り、無駄を作らない。私、義兄、義父は山に行き、義母は漬物を作り、妻は農業をしている。 柴田 そういうことが可能だと若い人が知れば後継者が出てくるだろう。大変だと小さい頃から聞かせられたら後を継がない。若者は、金と楽な仕事に憧れているわけ ではない。 須藤 価値観が変わってきている。今は「やりがい」がお金 以上の価値を持つ。面白い例だと、作業中に着る物などファッ ションの面から自分をプロデュースする農家さんがいる。 オリジナルの農作業着を作り、チーム名をつけ、製品のパッケ ージもとても楽しげで、大切な人にプレゼントしたくなる雰囲気。 「とことん好きな事をやってみよう!稼ぎはついてくる!」という 想いの人はどんどん増えているし、これからはそういう人が新しい 風となり、大切な役割を果たしていく社会になると思う。 柴田 今言ったことが地域を元気にする一番の基ではないかと 思う。お金ではなく人を活かす知恵が大事。地域の人も、何かで きないかと創意工夫する考え方が子どものうちからあるといい。 須藤 皆で共通の意識を育てていくのもまた、とても楽しい。 柴田 当事者意識を皆持つようにする、答えを見つけるだけでは なく作り出す。成果や報告書だけではなく、過程が大事で、環 境を見る目もそのように考えないと。 須藤 あくまで継続的な要素を前提にする。楽しく森を守りながら、 良い循環の中で利益も出す。日本の文化的に「稼ぐ=悪い」という イメージも時にはあるが、新分野においては特に、「稼いで、それを 用いて更に活動し、森がより良くなっていく」というプラスの循環が すごく大事。継続して私自身が楽しんで伝える。そういうことが大切 だと思っている。 柴田 例えば家を新築する際に、自由に落書きさせてよい部屋を 作り、子どもが意識した頃には外して大人向けの壁に張り替え できる、またはそのまま残せる等、住んでる人と一緒に家を育 てるということがあってもいいのかと思う。木材はそれが可能で、 時間の変化と共に一緒に歩める。そのような点が課題だと思うので、 須藤さんのような人がどんどんデザインしてほしい。木を使って 環境を良くし、人々が豊かに暮らせる、金銭的なものではなく、 精神的に豊かな生活がこれからのポイント。山形の暮らしにそ んな場所を作ることが大切。 FORUMTALK 横尾 友栄 有限会社壽屋代表取締役 YBC山形放送で16年アナウンサーとして活躍。退社後、実家である東根市の壽屋に入社し、2011年、代表取締役就任。現在壽屋寿香蔵で仕事をしながら、コミュニケーションに関する講座なども行う。2015年、出産。子育て真っ最中。壽屋は、食品添加物を一切使用しない漬物を製造販売している。 【壽屋寿香蔵】 所在地 東根市本町6-36 柴田 洋雄 美しい山形・最上川フォーラム会長/山形大学名誉教授 やまがた森林ノミクス推進懇話会会長

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