さくら物語19号
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|美しい山形・最上川フォーラム|04 所在地:山形県南陽市宮内3707-1 熊野大社内 TEL:080-5734-0909 定休日:火曜日(祝日の場合、翌日) 営業時間:11:00~18:00 南陽市宮内のまちづくりのために、まちの人たち自身の手によって生まれたカフェ。 新鮮な地元のおいしい食材にこだわったメニューを展開。地元で採れた季節の野菜や果物を使ったスムージーや季節のケーキなど、メニューを見ているだけでも楽しい。 店舗詳細ホームページ→ http://ichocafe.com/ 山形には蔵や農機具小屋を持つ家が多いが、耐久性等の問題から取り壊されつつあり、先代からの暮らしの品や家具、工芸品が家主の思いに叶わず、保存に困って処分されていることを知った。そこで「足が1本壊れている椅子の部品を作り直す」「大きすぎる棚を現代の暮らしに合ったサイズに作り直す」等、手を加えて使う、もしくは販売して次の持ち手に継ぐ仕組みを考えることができれば、この問題は解決すると考えた。この流れが、私が山形にこだわって仕事をする大切な理由になっている。預かる時には必ずお会いして、家具に込められた思いを聞き、それを大切にしながら私も作業をするし、県内の職人さんとも協働している。伝統工芸に現代の技術と感性を加えた商品群のプロデュースと運営も、デザイナーの友人と取り組んでいて、つくり生み出すものではなく、直し生み出す視点からのものづくりを国内外に発信・流通させている。 横尾 すごく幅広い! 柴田 形のデザインだけでなく、既存の物をよく理解し、方法を提案する、とても珍しい方面のデザイナーだね。 須藤 実はコミュニケーションが仕事の9割くらい。 柴田 仕事として非常に面白いよね。そして仲間やいろいろな人がかかわることで発想が広がる。 須藤 伝統工芸の作り手さんにアドバイスをもらって私自身が成長できたり、お客様が新しい視点を発見させてくれたり。どの案件も私の立ち位置はつくり手や経営の伴走者。ベストな手段を一緒に考えて、デザインで実現することを常に意識している。 柴田 難しいのは、そのようなものに対して対価を支払う意識がまだないことかな。須藤 はい。企業でも行政でも「デザイン費」という概念を取り入れて仕事を発注をするのはまだまだ難しいことでもあると思っているので、納品した仕事や実例、数字から価値を感じてもらい、少しずつデザインの提案をしている。まずは対価を踏まえず飛び込まないといけない時もあるが、共通認識や信頼関係が出来れば、長くお互いに成長の見込める仕事になる。 柴田 人を知らないとできないし、地域を知ることが全てに生きてくる。時代の最先端を行く仕事。今後そういう時代になってくると思う。 須藤 一級建築士の友人と「LCS(ルクス:Link、Cycle、Survice)」というデザインユニットを組み、「YAMAMORI PROJECT(ヤマモリプロジェクト、山形県「みどり環境公募事業」採択、2013年「グッドデザイン賞」受賞) ①林業、製材業、木工業に関わる人たちを訪ね、紹介しながら県内での生産サイクルを作る、②一般の人が日常で使える製品を作る、③身近な山や森を舞台に、土地の木やものづくりに親しめる『体験ツアー』を開催する」という活動に、2012年から取り組んでいる。きっかけは「県産栗材の 天板でテーブルを作りたい」というお客様のリクエストをもらい木材市場に行ってみたら、山形には広葉樹が定期的に買える流通がない、という現状を知ったこと。需要があるのに買おうとした時に買えないことが衝撃だった。気になって現場を訪ね歩くと、林業家、製材業、デザイナー、加工業、売り手、買い手、それぞれに「県産材がもっと流通すると良い」という思いがあった。私の役割はその循環をデザインすること。そこからヤマモリプロジェクトをスタートさせた。デザイナーと言うと、机に向かって手と頭を使う職業と思われがちだが、私にとってのデザインの全景がこのプロジェクトにあるような、街やフィールド、そこにいるヒトとのコミュニケーションにある。「林業に興味があるか」と聞かれて手をあげる方は少ないかもしれない。けれど、美味しい物や楽しい木工ワークショップを入口にツアーに参加してもらい、1人でも2人でも「林業や森って案外おもしろい」と感じても らえたらと思う。約5年間活動し、土地の特色にちなんだオリジナルツアーを14市町村で実施している。 FORUMTALK

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