建築士山形 2017 No.97 architect of yamagata
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 今年の鶴岡エネルギー懇談会で視察した表記の電力関連施設と工場について紹介します。「国内最大級の石炭火力発電所と国内防衛関連航空機のエンジン生産施設」 私たち一行17名は平成23年3月11日14時46分に発生した三陸沖を震源とする大地震が発生してから5年8カ月が経過した11月、東日本大震災による大津波は市全体の15%に当たる29平方キロメートルが浸水し、住宅・人的・農地・漁船等に甚大な被害を受けた復興途上の南相馬市を訪れました。(鶴岡を8時30分に出て、現地到着は12時過ぎ) 初日の午後に訪れた東北電力の大容量の系統用蓄電池システムの南相馬変電所。この施設は福島復興へ寄与するべく太陽光発電や風力発電などの再生可能ヘネルギーの受け入れの拡大を目的として、平成28年2月に運転を開始しました。設備概要は出力・容量とも40,000KW、リチウム蓄電池の盤は2,080面、コンテナ80台。定格出力は500KW(500KVA)のパワーコンディショナ(PCS)が80台、PCSコンテナ40台、系統連携設備として66KV/6.9KVの主要変圧器1台、6.6KV/300Vの昇用変圧器20台、連携用開閉器一式を広大な敷地に備えています。蓄電池による需給バランスのイメージとしては、再生可能エネルギーの発電量が多く、「消費量を上回る」と想定される時間帯に余剰電力を蓄電池による充電を実施。逆に消費量が増加する時間帯は蓄電池から放電し、バランスを改善し再生可能エネルギーの受け入れの拡大に貢献する施設だと伺いました。これらは原ノ町駅近くにある原町技術センター制御所で監視制御されます。したがって保守点検以外の通常時は無人の施設だそうです。 初日の日程を終え、一般車両通行止めで震災復興工事のダンプが行きかう松川浦大橋を一望できる松川浦湾沿いの和風旅館に一泊し、翌日は相馬共同火力、(株)新地発電所と(株)IHI相馬工場を視察しました。 相馬市の相馬共同火力も東日本大震災で津波による甚大な被害を被り、早期復旧した施設ですが昭和56年6月に東北・東京両電力会社の出資で設立されました。平成2年8月から着工し、平成7年7月に1~2号機でそれぞれ100万KWの国内最大級の変圧型石炭焚きボイラの熱で蒸気を発生させ、その蒸気のエネルギーでタービンをまわし発電する火力発電所として営業運転を開始したそうです。酒田共同火力と同様、専用埠頭を備え工場まではベルトコンベヤで主燃料の石炭との木質ペレット(いずれも海外産)を供給をしています。海外数か国から年間使用量約450万トンをすべて貨物船で輸送、屋外にある貯炭場には約60日分に当たる85万トン(木質ペレットはサイロに2万トン)の貯蔵容量があります。環境保全対策として、大気汚染・水質汚濁防止・景観・騒音・CO2削減(バイオマス燃料の導入)など過去の教訓が活かされた対策が執られ、副産物の石炭灰の90%はセメント原料、他は土木・道路・グラウンド用資材として有効活用されています。182ヘクタールの広大な敷地の一角には「わくわくランド」というPR館を兼ねた地域の人たちの「ふれあい施設」として子供たちにも開放されている空間があります。 次の工場視察では前身の1853年石川島造船所創業以来、1960年現社名で誕生した(株)IHI相馬工場を訪問。1945年に日本最初のターボジェットエンジンを製造して以来、世界の航空機産業の一躍を担うジェットエンジンメーカーで、防衛システム事業、民間エンジン事業、宇宙事業などに取り組む事業部門で、防衛省が使用するすべての戦闘機や航空機に搭載されているエンジンの生産を担っているとお聞きし、初めての見識に驚きでした。宇宙産業でもあるロケットエンジンの開発・生産(主に部品)など、実績を挙げている企業秘密の豊富な会社でした。生産拠点はここ相馬(第1・第2)を含め国内4カ所にあるそうです。何よりも最先端の航空宇宙事業の工場が東北にもあることが私にとって驚きでもあり、感激した今回の視察でした。(写真は南相馬変電所・新地火力発電所・IHI工場)斎藤留吉 SAITO ryukichi鶴岡田川支部長(鶴岡エネルギー懇談会・合同視察研修シリーズ 報告第4弾)「南相馬変電所&新地発電所」「IHI・相馬工場」を視察して。鶴岡田川支部From南相馬変電所にて・・・(2016.11.10)Page04TitleNameNumberSAITO ryukichi支部だより3/9

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