建築士山形 2017 No.97 architect of yamagata
19/42

講演会:環境「異常気象と地球温暖化」講師:山形県環境アドバイザー、河合直樹氏山形支部 齋藤尚子さん 地球温暖化と言われ、京都議定書から約20年。当時はさほど深刻には考えていませんでしたが、近年では目に見える異常気象と農作物への影響などで、地球温暖化の怖さを身近に感じています。 講演では、地球の深刻な現状をお聞きし、想像以上に温暖化は進んでいることに驚きました。印象深かったのは、『2100年までの気温変化の予測』で、厳しい対策を取らなければ、2050年から地球が赤く変わっていく映像はとてもショックでした。CO2の排出がこのまま続けば、30年で2℃上昇してしまい、恐ろしい災害に多くの人々が苦しむことになる事を知りました。 会場でもCO2濃度を測定し、高い数値に驚きの声が上がりました。目に見えないものだからこそ、減らす意識と努力が大切なのだと感じました。建築でも省エネ対策を積極的に取り入れ、CO2削減の必要性を呼びかけていきたいと思います。天童支部 小鷹貴子さん 異常気象、地球温暖化、パリ協定、よく耳にする言葉ですが、実際のところ何がどのようにわたしたちの生活に影響を与えているのか、身近なところから分り易く教えて頂きました。 温室効果ガスのひとつである二酸化炭素は、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きく、石炭や石油の消費などにより大量の二酸化炭素が大気中に放出され、また、世界的にみると大気中の二酸化炭素の吸収源である森林が減少し、二酸化炭素は年々増加しています。二酸化炭素が増え過ぎると、気温が上がりゲリラ豪雨や巨大台風の発生などの異常気象、高温障害や害虫の異常発生による食糧不足、海水面上昇と海洋生物への影響などが起こると懸念されていますが、私たちの身近なところでもすでにその影響がみられるというのです。北海道産のさくらんぼが出回るようになり、温暖な気候を好む柑橘類の栽培が庄内地方で行われ、高温で米が白くなり、果樹の色付きが悪くなるなど。言われてみれば、実家で栽培した米に、以前より白いものが増えたように思えたのが、温室効果ガスによる温暖化の影響だとすれば、他人事でも遠い未来のことでもないということなのです。 実際に目で見る事も大事だと、測定器による二酸化炭素濃度を計測すると、室内は500ppmの目盛りを振り切ってしまいました。「石油ストーブを焚いているから当たり前」そんな言葉が飛び交いました。外気は400ppm。しかし、つい30~40年前くらいまでは300ppmだったそうです。私たちが設計の際に行う必要換気量は、室内で働く人が1時間に呼出する二酸化炭素量を、室内の二酸化炭素基準濃度から、外気の二酸化炭素濃度を引いた値で割って算出します。このとき、室内二酸化炭素基準濃度を1000ppmとし、外気の二酸化炭素濃度を300ppm~400ppmとして計算しますが、大気中の二酸化炭素濃度は、今後この数値が変更される可能性があるのか?と考えてしまいました。二酸化炭素が温暖化に直結しているのであれば、ここ数年で一般家庭にも導入されるようになったHEMSなどを利用して、家庭でのエネルギー使用状況の「見える化」に加え、二酸化炭素の濃度も「見える化」すればもっと地球温暖化と私たちの暮らしが密接していることを意識するのではないでしょうか。「石油ストーブを焚いているから当たり前」という意識改革に繋がればと思います。 地球温暖化対策の中での大きな課題が二酸化炭素の排出量削減ですが、二酸化炭素の排出量を減らすには、第一に化石燃料の消費を減らすことです。しかし、日本はそのエネルギー源の約8割を化石燃料に頼っています。パリ協定は化石燃料に依存した現在の社会、経済のあり方を大きく変えて、温暖化ガスを排出しない社会、経済への転換をめざすという協定でもあります。「2℃目標」や「ゼロ・エミッション社会・経済」 の実現は、簡単に達成できるものではないと思いますが、今対策をしなければ、温暖化の悪影響が今後いっそう深刻なものになることは間違いないのです。私たち設計者にできることは、省エネの計算に基づき、開口部(サッシ)の大きさや、断熱材を適材適所にきちんと施工し燃料や電力の消費を抑え、冷暖房機に少しでも頼らないすごし方ができるような設計をする心がけが大切です。また、山形県では昨年、森林(もり)のミクスが宣言されましたが、今ある森林資源を建材などに利用しつつ、新しい苗を植え、山を若返らせ、二酸化炭素の吸収量を増やすことも地球温暖化対策に寄与する事に繋がります。 温暖化対策を講じる一方、これまでの大気中の二酸化炭素濃度の推移をみると、今後避けられないであろうゲリラ豪雨や、巨大台風にも備えなければならないと思うと、すぐにでも対策に取組まなければならず、改めて温暖化対策の重要性を感じました。村山支部 草刈めぐみさん 説明が上手でとてもわかりやすかったと思います。大企業トヨタの取組みは知らなかったので、応援したくなりましたし、ご自身の省エネの取組み等も話されるところは、親近感を持ちました。 実際に空気中のCO2を計るなんて、なかなかないことを体験できて面白かったです。「環境」と「芸術」の講演会。From村山支部Page17TitleNumber会員だより 7/11 

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る