建築士山形 2016 No.96 architect of yamagata
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 本年は、8年ぶりに建築基準法および建築士法が改正された事と、建築業界が世間を騒がせるニュースが多々有り色々あった年でした。 改正建築士法が6月25日に施行されるのに伴い、6月17日に山形県の三連合会で改正建築士法講習会が開催されました。 新たなルールが定められた事により業務の手順、責任の所在が明確になる事で、建築主が安心して設計等の業務を委託できる様にする事が目的になっているようです。 建築基準法の改正が6月1日に施行され、建築確認申請手続き等が変わりました。確認申請の手続きの変更に伴い、各支部単位で県職員の方に講師としてご協力頂き、「改正建築基準法の解説」の講習会を開催し説明頂きました。 西村山支部では、村山総合支庁の長谷川審査指導主査様にお願いし、改正箇所の解説とこれまでの確認申請で指摘の多い事項や、現況の状況提供として事例をまじえて丁寧に説明頂きありがとうございました。 今後確認申請等、各審査がスムーズに出来るよう配慮して行きたいと思います。 世間を騒がせたニュースとして、今年3月に発覚した免震ゴムの性能データ偽装は、免震ゴムが市場に出回るために必要な「国土交通大臣認定」を取得する際と、実際に建物に免震ゴムを出荷時する際の2段階で技術的根拠のないままに性能データを改ざんし、基準よりも性能の低い免震ゴムを使っていた事で、建築業界への不信感を募らせました。 また、横浜市内のマンション「パークシティLaLa横浜」が傾斜した問題で、建物を支える杭の一部が支持層に届いていなかった事が問われています。 この杭打ち工事を手掛けた現場担当者は、杭のデータを不正に改ざんしただけでなく、杭の先端と地盤とを固定するセメント量のデータも改ざんしたことが分かっています。 このような事態で、建築物の躯体工事は大丈夫なのか。防水工事は?設備工事は?内装工事は?……と疑惑は際限なく広がっていく様相に成ってきています。 今回の問題を「一担当者が意図的にデータを改ざんした想定外の不正行為」で終わらせてはいけない。なぜ不正を起こしたのか、なぜ一次下請けも元請けも監理者も不正を見抜けなかったのか、事業主(発注者)は善意の被害者でいいのか ・ ・ ・ ・ 。 これらを解き明かして再発防止策を講じないと、建築業界が失った信頼は回復できない。 10年前に発覚した構造計算書偽造事件で明るみになった建築界の構図は、法制度をいじっても、いまだに何も変わっていません。建築業界は発注者と受注者がいくつも連なる重層下請負が当たり前であり、その“建築生態系”では頂点に君臨する強者だけが力を持ち、末端は立場が弱いままです。工期やコストをめぐるプレッシャーが下請けを押しつぶし、プロとしての意識を欠如させ、不誠実な態度を誘発して、その一線を超えてしまった不正行為がひとたび明らかになると、社会を揺るがす大事件になります。 今のままでは、プロの誰もが傍観者や被害者の立場から、いつ加害者になってしまうかわからない危険をはらんでいます。施工者だけでなく、設計者も、監理者も、事業主も、取引に関わる不動産会社も。発注者や受注者に関係なく、まるでロシアンルーレットのように責任をたらい回しにしています。  プロジェクトが複雑になって設計や施工が分業体制となり、細分化された各工程で、実際に汗をかく匠の顔が見えにくくなっています。現場では管理しなければならない項目が増大し、業務が膨大に増えて来ています。「責任施工」の名の下に、強者が弱者にリスクを押し付ける状態が日常化しています。性悪説に立って法制度をがんじがらめに厳格化するよりも、プロがやりがいや誇りを持って仕事に愛を注ぎ込める環境をつくることが大切だと感じます。自分たちがつくる建築への愛、一緒に仕事をする仲間たちへの愛、そして引き渡した後に住む人や利用する人への愛。 嫌々やらされ仕事をこなすばかりでは、愛のない建築だけになってしまいます。まずは、適正な工期と適正なコスト。誠実な職人が馬鹿を見ない建築界にして行かなければ成らないと考えさせられます。安孫子文亮 ABIKO humiaki西村山支部長変動の一年。西村山支部FromPage08TitleNameNumber7/9支部だよりABIKO humiaki

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