建築士山形 2015 No.95 architect of yamagata
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FFemale Department Committee女性部委員会Page35 女性委員会では、9月の女性委員会東北ブロック大会秋田大会において「再生可能エネルギー」木質バイオマスの活用によるエコな暮らしについて発表しました。 初めに、各方面への見学や研修を行いました。そして、今私たちに出来ることからやっていこう!との思いでまとめていきました。今、再生可能エネルギーへの関心は高く、エネルギーの供給を消費近くに分散して配置する『地域における小規模・分散型エネルギーシステムの構築』が進められています。そして、『再生可能エネルギーを私たちが個々の暮らしの中で導入できないか?』という思いから、私達の生活により身近な「再生可能エネルギー」として木質バイオマスに着目しました。以下は大会で発表した内容です。平成26年度 女性部委員会活動より。大泉みどり OOIZUMI midori女性部委員会 委員長 木質バイオマス燃料として、主に使われているのが『薪・ブリケット・ペレット』などで、「環境にやさしいエネルギー」と言えます。これらを燃やす時に出るCO2は、樹木が大気中から吸収するCO2の量と同じと言われ、「カーボンニュートラル」と言います。木質バイオマスを使用した暖房機器では、身近なところに薪ストーブやペレットストーブがあります。 薪は、山形では、行政がさくらんぼ等の剪定枝や河川やダムに流れ着く流木などを薪ストーブ利用者に無償で提供する取組も行っております。しかし、薪の保管場所の確保や既存住宅への設置がしにくいことなどから、薪ストーブはその愛好家に限られてしまいがちです。 ブリケットとは、おが屑や木屑を圧縮して固めた加工の薪ですが、防災グッズには適しているものの、細かい多量の灰が発生するなど、普及するには課題が多いようです。 ペレットは、間伐材や伐採時に発生した支障材、さらには製材工場などから排出された廃材などを原料にして作られ、エコ燃料として注目されています。ペレットストーブは、既存住宅にも設置がし易く、タイマーや自動着火機能が付いている機種もあり、普及に期待が持てます。 そこで私達は、2つの木質バイオマス工場へ研修に行ってきました。1つは、大規模なペレット製造工場で、山形県の南西部、飯豊町中津川地区にある『中津川バイオマス株式会社』です。中津川財産区有林の面積は、12,000ヘクタールと広大な面積を保有しながらも、山間部の人口は激減し、集落機能の低下が危惧され、地区住民の共通財産である森林資源の有効活用が求められていました。そこで町は、独自に『森林資源利活用プロジェクト』を立ち上げ、林業の復興と地域の活性化、森林資源とエネルギーの地産地消、新たな産業の起業化による雇用の創出を念頭に、平成21年4月、プロジェクトの運営母体となる『中津川バイオマス株式会社』を設立しました。事業費は、3億4500万円(うち地域バイオマス活用交付金1億2300万円)です。 中津川バイオマス株式会社は「森林整備供給型」として豊富な材木資源を利用し、おが粉やペレットを製造しています。原料は、地元の間伐材、流木、支障材です。生産の主力はおが粉で、売上の80%を占め、おもにキノコ栽培の菌床用としての需要があります。残りの20%はペレットで、バイオ燃料として販売しています。生産量は、木質ペレットとしては:300t/年 2t/日製造しています。平成24年、飯豊町・山形大学・山本製作所が連携して『飯豊型ペレットストーブ』を開発しました。 2つ目は、小規模な木質バイオマス製造工場で、山形県の南西部にある人口8,400人の小国町にある『小国グリーンエナジー合同会社』を見学しました。同社の高橋睦人氏は、ガソリンスタンドの店長を経験されており、原料を100%海外に頼っている灯油を販売していく中で、小国町の一般家庭暖房に使われる燃料費だけでも年間約3億円が流出していると試算し、灯油から木への転換を図り、輸入に頼らないエネルギーの構築を目指して、平成20年『小国グリーンエナジー合同会社』を設立しました。小国グリーンエナジー合同会社は地域供給型を目指しています。こちらの主力は、小型製造機械によるペレットの生産販売と、薪ストーブ・ペレットストーブの販売及びメンテナンスです。定期的なペレットの配達とメンテナンスを兼ねた契約をしています。ペレットの原料は、主に建築資材の廃材で、生産量は200t/年・1t/日を製造しています。地域分散型により地産地消を目指し、環境にやさしい商品の販売をしたいとの事でした。 次にペレットストーブから出る灰の活用について、1つご紹介いたします。ペレットから出る灰を焼き物の釉薬に利用するという新たな試みに挑戦しているのが、山形県尾花沢市銀山温泉のほど近くにある窯元『上の畑焼陶芸センター』です。現在、山形県産のペレットの灰を利用した作品が、銀山温泉の旅館で出されるお膳の器にも利用されております。センター長の伊藤瓢堂(イトウヒョウドウ)氏は、「いずれは、ペレットの灰とここで焼いた器を交換できるシステムを作りたい。そのためには、地産地消の出所のはっきりした良質の灰でなければならない」と話してくださいました。・・・現状から見る打開策として・・・ 県土の72%が森林という山形県ですが、安価な輸入材との競合による採算性の悪化や、林業従事者の高齢化及び減少、管理が長期間放棄され、一部では荒廃が進んでいます。現在の様な状況が続けば、土壌の劣化が進み、甚大な被害をもたらしかねないことも懸念し、森林の復活を早急に考えていかなければならないのが現状です。健全な森林の育成は、植林 → 育林 → 伐採です。間伐や下草刈りをして終わりではなく、プロセスを経て産まれる木材を活用することで初めて循環が生まれ、かつての日本で行われていた人工林を構築する理想的なサイクルが成り立つと考えます。そして、木質バイオマスは、持続的に再生可能な資源であり、これを活用することは、循環型社会の構築に大きく貢献します。そして、地域経済の活性化につながります。・・・まとめとこれからの課題として・・・☆間伐材を利用した大規模工場の役割は、森林の整備、雇用の創出、そしてこの事は地域経済の活性化へとつながっていました。また、小規模化及び分散化することで地域資源を利用し、地域エネルギーの自給率が向上します。☆ペレットなどの木質バイオマスの利用促進には、定期的にペレット燃料を配達することやメンテナンスを行うといったサービス体制の構築が必要です。☆消費者の責任意識の形成が、地産地消による地域活性化に繋がります。正当な対価の支払いは、地球温暖化対策に繋がります。・・・最後に・・・ 私たち女性委員会は、これらの活動を通じて『再生可能エネルギー及び木質バイオマスの活用』を学ぶ良いきっかけを得る事ができました。これからも環境に対する意識を忘れずに、『エコな暮らし』に向けての活動を継続させて行きたいと思います。 女性委員会の活動にご協力頂きました多くの方々、会員の皆様に感謝申し上げます。Page35TitleNameNumber1/1OOIZUMI midori女性部委員会

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