建築士山形 2015 No.95 architect of yamagata
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調査内容は一次調査で総合的な所在調査を行い、二次調査では、一次調査でリストアップしたものの中から調査委員会において、価値や特殊性を有すると判断された建物について、アンケート及び詳細調査をおこなった。三次調査は代表的民家を選択し、世帯主の協力を得て平面図を作成した。なお、調査した中から印象の強い民家12棟を掲載した。4.茅葺屋根の現状と茅葺師について(1) 茅葺屋根民家の現状 現在、県内に464棟の茅葺屋根民家が存在している。内訳は村山地区162棟、最上地区23棟、置賜地区220棟、庄内地区59棟である。 これとは別に現在空家又は廃屋になっている茅葺屋根民家は全県で130棟あり、これらは今後経年劣化等に伴い景観を損ねたり、環境の面や安全性も懸念される。茅葺屋根に住居する人は、その葺き替えや維持補修が大きな負担となっており、一刻も早い総合的対策が急務と考える。(2) 茅葺師の現状 今回の調査の結果、現在県内では41人の茅師が茅葺屋根の仕事を担っている。しかし大半が70歳以上の高齢の上、茅葺屋根の減少に伴い後継者も育っていないのが現状である。茅師の技術は一朝一夕では不可能な仕事であり、一刻も早い育成や養成が必要である。又、河川の改修や整備に伴い多くの茅場が失われ、茅の確保も困難な状況であり、茅葺屋根は危機に直面していると言える。1.はじめに かつて県内のあちらこちらに美しい茅葺屋根の集落が多く点在した。周囲の自然に溶け込んだ茅葺屋根民家は日本の風土を形成していた。まさに日本の原風景といえる。しかし、急激な生活様式の変化や、屋根の葺き替えによる経済的負担、茅師や材料の入手等の問題で茅葺屋根は急速に減少の一途をたどっている。新たな茅葺屋根で造ることは現行法では厳しく制限されている。この様な状況において、県内全35市町村の茅葺屋根民家を調査し、その実態が明らかになった。その結果、いかに茅葺屋根文化を残すかが問われている。過去に調査をした資料も数多く残されている。これらの資料とを比較分析してその実態を把握し本県のみならず全国の茅葺屋根文化を伝承するきっかけになることを願う。2.目的 本県には茅葺屋根の文化財建造物が多く、その維持保存のためには定期的な修理修繕が必要不可欠である。しかし、近年、県内地元の茅葺職人の減少、高齢化、後継者不足等が顕著であり、常時の修繕においても支障が生じていることから、文化財保護の観点から、茅葺技術の継承に資する施策展開を図るものである。3.調査内容 県の茅葺屋根建造物に係る実態調査の実施要項に依り調査委員会が設置され、調査員8名に依り県内35市町村をくまなく調査した。SSpecial Topics特集Page29-33県内の茅葺屋根建造物の実態について。Page29TitleNameNumber1/5県内の茅葺屋根建造物の実態について特集

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