建築士山形 architect of yamagata 2014 No.94
8/38

 建築上の凶日といわれる山形県特有の悪しき風習である「三隣亡」が今年も建築関係者の頭を悩ませるのだろうか?干支が亥・寅・午の年は、年間を通して「三隣亡」だという。まさに天下の迷信が建築着工の邪魔をするのである。今年は午年、それでなくとも4月から消費税が8%に上がってしまうというダブルパンチが心配される。県神社庁によれば「三隣亡」は古い暦には無かったが、江戸時代中期ころから暦に表われ明治時代に流行した民間信仰の一つだそうだ。当初は「三隣宝」と書かれており「家建てよし」の吉日とされていたのである。その後に「三隣亡」と書かれた暦が出回り、建築の凶日と変わってしまったのである。 ある年の暦の編者が「よし」を「あし」と書き間違え、その後、凶日に都合のいい漢字に書き改めたのが原因だという説がある。また一方では、山の木を切りすぎて土砂災害が起こるのを防ぐために数年に一度は伐採しないで山を休ませる「山林防」と記したものが時代を経て変化したという説もあります。 神社関係者は口を揃えて、“三隣亡そのものが根拠のない迷信でそれ自体が存在しない県もある”と言っている。さらに、山形県の場合でも暦の上で月毎の「三隣亡」は民間信仰として残っているが、年間を通した“年ふさがり”の「三隣亡」というのは無いと否定もしている。庄内地方の一部でいつ頃からか語られ始め、十数年前から最上地方に飛火し、数年前から村山地方の一部にも広がり始めたのである。八幡神社の宮司は「年間通しての“三隣亡”なんて誰も聞いた事がない」と明確に言っているだけに、この風評は何とか無くさなければならないのである。 この迷信の厄介な点は建て主ではなく、隣近所に災いが降りかかるという言われのところにある。家を建てる・卵を立てる・人を立てるのは難しいと言われるが、家を建てる難しさは、人が幸せになるという妬みもあり「三隣亡」の噂を耳にした途端に、隣人との関係が壊れたという人間関係も絡むところに更なる難しさがあるようだ。 一つの考えとして……。“山林は山の神に守られ育つ”という言葉を山師の方より聞いた事がある。そこで、山形県内の住宅の木材を全て県産材で建てれば「三隣亡」という悪しき風習は”山の神”が守ってくれるという言い伝えを、建築業界・神社関係者あげて広く浸透させるように行動を起こしてみたらどうだろうか?藤野和男 FUJINO kazuo西村山支部長「三隣亡」を憂う。西村山支部FromPage06TitleNameNumber5/9支部だよりFUJINO kazuo

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です