クローバー第37号 平成26年10月15日発行
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診察室39 認知症は、現在推定患者数が約462万人と言われており、高齢者(65歳以上)の実に15%以上が認知症と診断される結果となっています。2015年には高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が26.0%と推定され、今後もその割合が増加していくと予想されています。これに併せて認知症患者数もますます増加し、今や認知症は誰もがなり得る身近な疾患と考えられます。 認知症は「もの忘れ」を主症状とする病気の総称であり、その大部分をアルツハイマー病などの未だ治せない神経変性疾患が占めます。このため、認知症はどうせ治らないのだから病院に行っても仕方がないと考えている方もおられますが、これは誤りです。病状の進行抑制を期待できる薬剤や症状を緩和できる薬剤もあり、治療可能な認知症もあります。早期診断が重要であり、薬での進行抑制は病状初期の方が効果を期待できますし、認知症の診断を受けご本人やご家族がどのような病気であるかを知ることで、介護や接し方などの対策を十分に立てることができ、生活上のトラブルを減らすことができるからです。また、治療可能な認知症であっても、その病気を長期間放置しておくと恒久的な機能障害になり、治療効果を望めなくなってしまいます。 「加齢に伴うもの忘れ」と「認知症によるもの忘れ」との違いは、大雑把にいうと、食べた食事のメニューの一部が思い出せない(体験の一部を忘れてしまう)というのが「加齢によるもの忘れ」で、食べたこと自体を忘れてしまう(体験自体を忘れてしまう)というのが「認知症によるもの忘れ」と言えるでしょう。 当院では、家族を交えた問診や血液検査、画像検査などを用い、総合的に診断を行っています。認知症は、患者さんのみでなく周囲の方にも影響のある疾患であり、包括的対応が求められます。家族だけで対処するのではなく、介護などをサポートしてくれる社会資源を十分に活用していくことも重要になります。「認知症かな?」と心配されている方は、お気軽にご相談ください。医療安全推進室から032014・10・15神経内科医長中嶋 信人認知症のお話 医療安全推進室では、地域の皆さんに安心で安全な医療を提供するために、院内で出されたヒヤリ・ハット事例を収集し、原因の分析と対策を行っています。高齢の患者さんが多いこともあり、歩行時の転倒やベッドからの転落、薬の飲み間違いなどの事例が特に多くなっています。また、医療事故を防止する活動として、職員への医療安全情報の配信や院内の巡回、外部講師を招いての院内研修などを実施しています。 このような取り組みにより、平成25年度は公表する医療事故は発生しておりません。これからも、病院全職員が医療安全に対する意識を高く持ち、より安心で安全な医療の実現を目指し取り組んでまいります。平成26年度医療安全セミナーより影響レベル(報告時点)傷害の 継続性傷害の 程度内 容レベル0--エラーや医薬品・医療用具の不具合が見られたが、患者には実施されなかった。レベル1なし-患者への実害はなかった(何らかの影響を与えた可能性を否定できない)レベル2一過性軽度処置や治療は行わなかった(患者観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた)レベル3a一過性中等度簡単な処置や治療を要した(消毒、湿布、皮膚の縫合、鎮痛剤の投与など)レベル3b一過性高度濃厚な処置や治療を要した(バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、手術、入院日数の延長、外来患者の入院、骨折など)レベル4a永続的軽度~中等度永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない)レベル4b永続的中等度~高度永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う)レベル5死亡-死亡(原疾患の自然経過によるものを除く)

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